偏食系男子のススメ【完】
「……してねーよ?」
「嘘、今の間何!? うわさいってい……! きもい汚い地獄に落ちて業火に焼かれろこのクズ!」
それはあなたに見惚れてたからです。なんて言ったら殴られるから言えないけど、顔はニヤけてしまう。いや、酔ってるし素直に喜んでくれるかも。
いつもはつんけんして周りの意見なんか気にしないくせに、今日に限って珍しい。可愛すぎるから勘弁してください。
あとすごい暴言吐かれた気がするけどそれも愛情だと信じてる俺は微塵も気にしない。
「藤原命の俺に、浮気なんかできると思って本気で訊いてんの?」
「……見た」
「なに?」
大人しい藤島の横でその髪の毛に指を絡ませながら(普段は絶対させてくれない)訊けば、彼女は机の上に置かれた、俺のスマホを指差した。
ぴんと伸びた指の先が、怒りか不安かのどちらかで僅かに震えてるのが見て取れる。ちょっと今日マジで酔いすぎだぞ可愛いな。
「なに?」
「……女子から、着信あったじゃん」
「電話?」
「イズミって子。あんたと同じ名前」
「いずみ ……ああ、和泉? ヒロノちゃんのこと?」
言われて浮かんだのは、ファミレスのバイトが同じの一つ年下の女子。ふわっとした感じの子。