偏食系男子のススメ【完】
……それにしても痛え。久しぶりにまともにくらってしまった。
「……ごめん」
じっと黙って痛みに耐えていれば、不意にか細い声が囁いた。
驚いて顔を上げれば、怒っているように、泣きそうに顔を歪めた島がぶっきらぼうにもう一度、ごめんと同じ言葉を繰り返す。
……いつもは絶対謝んねーのに。
「……ただ、」
「ん?」
「……ただ、」
つっかえつっかえに言葉を零す藤島が話してくれるのを待っていれば、可愛いうちの彼女は顔を両手で覆って、折りたたんだ自分の膝に頭を押し当てた。その仕草かわい。
「……ただ、あんたがその子の婿に入ったら、イズミイズミになっておもしろいなと思っただけ」
「待て藤島どんな想像してんだよ」
なんつー、ありえない妄想を……! そしてどうして俺が婿入りする設定なんだよ。
深刻な顔をしていた割には、似合わない冗談みたいなことを言い出した藤島に、思わず吹き出す。
顔を上げた彼女は大真面目な目で俺を睨んできたから、慌てて咳払いで誤魔化したけど。
けど、確かに和泉 泉は変わった名前かもしれないと思うとまた吹き出してしまった。今度は軽く足を蹴られた。