偏食系男子のススメ【完】
「浮気なんかしねーよ」
「……」
「俺が好きなの、藤島だけだもん。するわけないじゃん」
「……」
「イズミイズミにもならな……い、し、」
イズミイズミて。お笑い芸人のグループでいそうだ。
危うくまたツボに入りそうになったけどなんとか堪えてふーっと息を吐いた。なんつー面白いことを考えてたんだうちの彼女は。天才かよ。
俺の鎖骨のあたりに顔を埋める藤島の頭を見て、やっぱどうしようもなくこの人が好きだなと思う。ほんとにどうしようもない。
「……早川」
「うん」
「……」
「……」
「……イズミイズミより、……あんたには藤島泉の方が合ってると思うよ」
絞り出されたような声に一瞬思考が停止して、その意味を推測して顔が熱くなる。
「……藤島それ、プロポーズ?」
「な、わけあるか! 私たちまだ学生……!」
顔を上げた藤島の顔が赤くて、思わず笑みがこぼれた。
真っ赤な彼女はハッとしたように顔を両手で覆い、再びその表情は見えなくなる。
「……藤島、顔見えない」
「見せないようにしてんだから当たり前だ!」
ちょっと意地悪したくなって藤島の腕を無理やりその顔から引き剥がせば、耳まで赤い藤島がたまらなく愛しい。
愛しいとか自分でもきもいと思うけどほんと愛しい。ていうか愛おしい。泣きそうやばい、泣きそう。こんな可愛い生き物前にして感動しないほうがおかしいと思う。