偏食系男子のススメ【完】
「……藤島泉も悪くないけど」
「ちょ、マジ顔見んな! 離せクズ川……!」
暴れる藤島をソファの背もたれに押さえ込んだまま、軽く笑ってみせた。そんな抵抗じゃ効かない効かない。
力の差は歴然として俺の方が上。酔ってる藤島に負けるほどひ弱じゃない。わざとやられたふりをしてあげられるほど、余裕もない。
「早川亜希も、悪くないと思いませんか」
「っ」
より一層顔を赤くした藤島が可愛すぎて、正直に言うとこのまま押し倒してしまいたい。
がーってしたい。めちゃくちゃに甘やかしてやりたい。大事な大事な彼女が嫌がるから、それは我慢しますが。
「……な、……私の言ったことバカにしてるでしょ……!」
「ちなみにこれは、プロポーズ」
声に出してまた笑った俺に藤島は顔を歪めて、こちらから目をそらした。
「……いや、もちろん今すぐってわけじゃないんだけど。いつか藤島が俺の名字もらってくれたらいいな、と、思った次第、……です」
あれ、やべえ。俺の方も恥ずかしくなってきた。
一気に顔が熱くなって、藤島を拘束していた腕の力が緩まる。
何言ってるんだ自分、とすぐさま羞恥心に駆られるも、一度放ってしまった言葉は口の中に戻ってくれるはずもなく。
赤くなった顔を片手で覆い隠し、少しだけ藤島と距離をとれば、それを見逃してくれない彼女は俺の腕を顔から引き剥がした。
いつもの余裕な表情に戻っていた藤島は、ふっと綺麗に笑う。思わず見とれる。