偏食系男子のススメ【完】
しかしちなみに本当は、ボス猿に嫌われたのは早川に懐かれる前だったということを、おそらく彼は知らない。
確か、教室の扉の前でたまってた彼女たちが邪魔で、どけよブスって言っちゃったことが原因だったのだと思う。
私はほんのちょっぴりだけ、思ったことを考えなしに正直に言っちゃう人間なのだ。ほんのちょっぴりだけね。
周りにいちいち説明するのは面倒くさいから、表向きは早川のせいだということにしてあるけど。
亜希ちゃんったら若干お茶目なとこもあるんだからー。うふふー。
まあ私がクラスメイトに嫌われやすいのは今に始まったことじゃないし、小学校の頃から友達は一人もいないから、別に平気なんだけど。
その原因が自分の性格にあるということも分かっちゃいるけど、他人とつるむために自分を偽るのなんかバカバカしいし、気にしないことにしてる。
ぼっちで不便を感じたことなんて一度もないし、むしろ慣れてしまえば気楽でいい。
「藤島怒ってる?」
――のに、人に好かれることがこんなにも面倒くさいことだとは思ってなかった。
何が偏食系男子だよ。
言い寄ってくる女子と適当に付き合えばいいのに、私なんかに構わずに。
「怒ってるからもう二度と話しかけないで」
「あー、やべえ、好き」
「話聞いてんの!?」
早川は私をうっとりとした目で見詰めてくるから、その目ん玉潰してやろうかと思った。