偏食系男子のススメ【完】
「配役決めたり、全員分の台本コピーしてホチキスで留めて冊子作るのなんか、普通1人でやんねーよ」
「……」
「優しいよ、藤島」
頭沸いてんのかコイツ。
思いっきり顔を顰めた私に、早川は顔を緩めたまま感心した様子で台本をめくっている。
私が台本を作ったのは、じゃんけんで負けた自分が必要以上に責められないようにするためにだし。
ていうか適当だし。絶対クラスのためなんかじゃない。ましてや優しいわけがない。
「あんたバカ? 私は、クラスの奴らに嫌がらせしてやろうと思っただけ。現に皆、白雪姫なんて嫌がってんじゃん。ザマミロって感じ」
「藤島がこうやって強引に決めなかったら、多分何も決まんないで余計揉めて、クラスの雰囲気悪くなって険悪になって、ぐだぐだになってただろ。ありがとな」
「知らないっつーの。元はといえば私がじゃんけん負けたせいだし、あんたにだけは感謝されても嬉しくない」
そんな風に言われたくない。勝手に人を良い人間に仕立て上げるなって感じである。
断じて言うが、私はそんな優しい人間じゃない。自分で言うのはいいが、他人に言われるとなんかゾワってする。キモイ。