偏食系男子のススメ【完】
そして嫌われている自覚がありながら、ちゃんと真面目に衣装を縫ってあげている彼女の気心も理解できない。
文句も言わずにせっせとせっせと。そういう風にいい子ぶってるから嫌われるんじゃないの?
自分は赤い布一枚被るだけなのに。なんで他人の分まで。バカじゃないのって感じ。
少しは私を見習えばもっと上手く生きていけるだろうに。
「ほら、戻るぞ。俺が一緒にいてやるから」
「やだよお、翔ちゃんといたら翔ちゃんのこと好きな女子に僻まれてもっといじめられるもん!」
「よっしゃ翔くん川端さんともっとイチャつけ」
「あーちん話聞いてた!?」
「聞いてたから言った」
ひどいよお、とポカポカ私の腕を叩いてくる彼女の背中をボカボカ叩いて突き放した。
川端さんの鳴き声って、ひどいとあーちんとやだよお、の3つだけなんじゃないかと思う。新種の生物の鳴き声。
それから彼女は数分ほどしつこく駄々をこねていたけれど、結局は翔くんに説得され自分の教室に戻ってくれるようだ。おかえり私の平安。
「……じゃああーちん、作業終わったら一緒に帰ろう?」
「無理」
「お願い、最近きらり、宇宙人にストーカーされてるの! このままじゃキラリン星に連れてかれちゃう! あーちん守って!?」
「ストーカーも宇宙人もあんただっつーの!」
適当な嘘で私の気を引けると思ったら大間違いだぞ。そう言えば私が心配するとでも思ってるのだろうか。するわけがない。