偏食系男子のススメ【完】
いい加減静かにしてくれ、と語った私の目を見て、川端さんは何かを悟ってくれたのか、ついに大人しく帰ってくれた。
ようやくだ。一気に疲れた。翔くんありがとう。
さて。じゃあ私は帰るとしようかな。仕事もないし。ていうかいても邪魔だろうし。いたくないし。
座っていた椅子から立ち上がって、机の横にかけてあった鞄を手にとった。
なんだかんだ盛り上がっている教室では、こっちに注目している生徒はいないから、楽にサボることができそう。
「藤島」
と思ったのに、後ろから声を掛けられて腕を引かれた。
藤島、藤島。藤島かあ。どう聞いても私のことだろうな。めんどくせえ。
私の腕を掴んでいる手を振り払って逃げようかとも一瞬考えたけど、それはやめて仕方なく首だけで振り返ってやる。
「……なんだボス猿か」
「は!?」
「早川じゃなかっただけマシだって話。で、なに?」
「そこじゃねえよ! ボス猿ってなんなわけ!?」
「……あ、……あー、そこね」
あーんしまった。亜希ちゃんのうっかりさん。