偏食系男子のススメ【完】
「……藤島、全然俺になびいてくんないし、簡単に他の男のもんになっちゃいそうでちょっと不安」
「知るか! 私はあんたのもんじゃないし、他の誰のものにもなる気ない」
「……この前映画付いてきた男は?」
「……翔くんのこと? だとしてもあんたには関係ないし、あのとき付いてきたのは早川の方じゃん、離せクソ野郎……!」
今度は足も使って早川の脛を攻撃するけど、これは効くみたいでちょっと怯んだ様子。
その隙に彼の手を無理やり外し、電気をつけた。
明るくなった室内で、早川が拗ねたように不満げに唇を尖らせている。
そういう表情は、私が委員会をサボったときにこそしてくれればいいのに。今じゃなくて。
「……次私に勝手に触れたら警察呼ぶから」
「藤島目がガチなんだけど」
「ガチで言ってるんだから当たり前でしょうが」
「……今度から気をつけます」
最初からそう言え。まったく無駄な会話させやがって。
そんなに嫌だったんだ、と落ち込む早川を見るのは何となく気まずくて、ため息を吐きながら教室を振り返った。
すると不意に人影が目に入って、少なからず動揺してしまう。
こちらに背を向けて、机の陰にしゃがみこんでいるその姿は、いつからそこにあったんだろう。てっきり誰もいないものと思い込んでいた。