偏食系男子のススメ【完】





「な、なんで早く言わないの! いつからない?」


「お、お昼休みに、……職員室に行って、先生にお金預かって……、そのあとどうしたか覚えてなくて、……ご、5時間目、音楽だったから音楽室に行って……っ、どうしたかわかんな……」


「ないって気付いたのは?」


「……さっき、体育館で、思い出して……」




うわっ、うざ、泣くなよ!


今にもその大して大きくもない瞳から涙が溢れ出てきそうなボス猿を見たくなくて、もう一度チョップを食らわせた。




「泣いてる場合じゃないだろ、見つかんなかったらあんた自腹だよ? 一生懸命探せよ」


「わ、分かってるよ、だから探してんじゃん……!」


「じゃあ私音楽室行くから、あんたは教室探して。隅々まで」


「……え?」


「他の奴らにバレたくなかったら、皆が戻ってくる前に見つけろっつってんの!」




ほんとに物分かりの悪いバカは嫌い。猿はもっと嫌い。


怒鳴るように言いつければ、ボス猿の背筋がようやくピンと伸びたから、私も立ち上がって教室を飛び出した。



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