偏食系男子のススメ【完】
音楽室に着けば、不運にも鍵がかかっていて舌打ちを鳴らしたくなる。
そういえば、放課後使わない教室は施錠されてしまうんだった。
職員室まで行くの面倒すぎる。今日に限ってそこまで頭が回ってなかった。
……なんとか、扉を蹴破って中に入れたりしないかな。
ガンガン重たい扉を蹴飛ばしてみたけれど、これがどうにも手強くてへこませることすら出来なかった。
……無理か。そりゃそうだ。馬鹿か私は。
「こらこら藤島」
「あ?」
諦めて一歩身を引いた瞬間、慌てた声とともに二の腕を引かれて、更に後ろに下げられる。
片足が上がったままだったから、危うくバランスを崩しそうになったけれど持ち前の運動神経で持ちこたえた。さすが私。
振り返れば、焦った様子の早川がいて、お前かよと唾吐いてやりたくなる。
「……何か用?」
「鍵持ってきた」
「え」
早川は得意げにちょっと笑って、私を押しのけて扉の前に立つと、鍵穴にそれを差し込んで扉を押した。
蹴っても蹴ってもびくともしなかったそこはあっさりと開き、中に入った彼を追って私も足を踏み入れる。