近くて遠い恋
「えっと。悪いな、純太」
ぎゅっ。
「「…………ん?」」
私と純太くんの声が見事に重なった。
抵抗する暇もなく握られた右手をじっと見る。
今、手を握られている。隆斗に。
いや、待って。全然意味がわからない!
「ちょっと、隆斗?」
「まあやっぱ見てられねーよ。こいつ以外なら喜んで応援してやるから」
また無視ですかーー!!!
私の密かな悲痛の声は届くわけがなくて、強引に腕を引っ張られた。
思ったより強い力に驚きつつ、少しイラついているような顔をする隆斗に、何も言えなくなった。
そのままなぜか店の外へと連れて行かれる。
一体どこまでいくんだろうな、と思っていると、先ほどまでいたカラオケ店の近くある大きなビルの前でぴたりと止まった。
「なにがあったの?」
私は状況を理解するために聞いた。
隆斗はビルの壁に背中を預けて、大きくため息をついた。
「ほんっとに鈍感なんだな。それ直したほうがいいよ」
少しカチンときた。
もしかして嫌味を言いにきたの?
わざわざ外に連れ出して?
いや、さすがに隆斗もそんなに意地汚くない。