近くて遠い恋


隆斗はらしくない優しい微笑みを浮かべる。



「俺にもわかんないんだよ。気づいたら外に連れてきてた。俺も驚いたんだ」



「なにそれ、変なの」



私はつい笑い声を漏らす。



だって本当に変なんだもん。



こんな隆斗は、初めてみる。



なんだか意外な一面が見れて嬉しかった。



「てかさ、もう俺ら先に帰らない? あと30分くらいで終わるし」



「えー。隆斗と一緒に帰るとなるとちょっとな」



もっと意外な一面が見えるんじゃないかなとイジワルしてみる。



「いや帰りたくないならいいよ。まあ暗い夜道で1人で帰りたいならどうぞ」



隆斗はいつも通りの涼しい表情で歩き出した。



ちょっと攻めてみたらすぐ躱される。



そういうところは本当、小さいころから変わってない。



「嘘です嘘です一緒に帰らせてください」



私は隆斗を必死に追いかけた。
< 25 / 30 >

この作品をシェア

pagetop