近くて遠い恋
それからずっと隆斗の背中を見ながら話をした。
カラオケ店から家までは結構遠いから、話題もそれなりに変わっていく。
するとこれまで私の話にぶっきらぼうにうん、とか、そうかとか、よかったね、とか言ってた隆斗が急に質問を挟んできた。。
「お前って好きなやついるの?」
「好きな人?」
好きな人か。うーん。いないな。いきなり何を言い出すかとおもったら、変なことを聞いてくるんだね。
私はすぐにいないと答えた。
「じゃあ隆斗はいるわけ?」
隆斗はぴたりと足を止める。
どうせいないよとかいうと思ってたけど、予想外な質問だったのか、なかなか言い出さなかった。
一体何をそこまで考える必要があるんだろう。今日の隆斗は変な奴だ。
話を逸らそうかなと思った時、やっと答えてくれた。
「いるよ。好きなやつ」
「え。だれ? ちょっとだけヒント」
「言うわけないだろ。アホか。もしヒント欲しいなら学校の自販機全部買い占めてくれ」
なんて無理難題な条件を言って、隆斗はまた歩き始めた。
私は帰宅するまで、誰が好きなのか予想してたけど、全く分からなかった。
気になって、仕方なかった自分がいた。