近くて遠い恋


「俺んとこ使ってください。俺はもう大丈夫なんで」



聞き覚えがある声だ。



私は眉をひそめて……



気付いた。



「あっ」



私はつい声を上げてしまう。



「ん? あれっ、美雪がなんでここに」



私の名前を呼ぶ彼。



私はこの人をよく知っている。



「いや、なんで隆斗こそ!?」



浅野隆斗。



向かい側のマンションに住む幼なじみで、男子硬式テニス部のエース。



サラッとした黒髪に、178センチの長身で爽やかな笑顔が女子に人気を博しているいわゆるイケメンだ。



私から見てもかなりかっこいいも思う。



けどーー



「うるさいな。みんなが迷惑だろ。静かにしろよな。元気バカ」



こうやってすごく意地悪をしてくる!



しかも口悪いし……。



「元気バカってなんなの!?」



私は隆斗を睨む。



「だから」



すると隆斗はゆっくりと私に近づいてきて、



人差し指を私の口に押し付けて、



「静かに」



と、耳元で囁いた。


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