run and hide2~春の嵐~



 だけど、張り切り屋さんなんだな、それって営業職には大事なことよね、と私はニコニコする。そりゃあやっぱり若さも力を発揮しているんだろう。勿論、彼女は営業で雇われたのではなく、牛田辺さんと同じく営業サポートなのだけれど――――――――


「あれ、翔子?」


 声が聞こえてパッと振り返る。

 まさかの再会、私達の後ろにある地下鉄の入口で、振り向いているサラリーマンは!!

「正輝!」

 ついそう叫んでしまって、隣の田中さんを思い出してハッとする。いけないいけない、今は仕事中なんだったわ!だけど、この鼓動がやたらと大きく聞こえるのは無理もないことだ。だってまさかの出会い!私のスウィートハートが目の前にいるんだもの!

 正輝はいつもの笑顔でにっこりと笑ってこちらに歩いてくる。昼過ぎの太陽の光が彼に降り注ぎ、いつもより5割り増しでいい男に見える。ピンク色したハート型の花びらが、ワッサー!と周囲にばら蒔かれたようだった。・・・まあ多分、いや確実に、それには私の個人的視界フィルターがかかってるからだろうけれど。ええ、まあ、それはちゃーんと判っているんだけど。

「偶然だな、営業でここら辺まわってるのか?」

「ええと・・・うん、そうなの。正輝は?」

「俺はアポで。もう帰社だけど」

 爽やかな、実に爽やかな笑顔で正輝がそう言っている。私は急に喉が渇くのを感じた。ううう、いい男がこんなところに落ちてる!ああ、今すぐ半休の届けを出して、正輝をお持ち帰りしたい―――――――――


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