run and hide2~春の嵐~


 ・・・・・・・もう、相変わらず凄い力だわ。正輝はいつでも、私を瞬殺出来るのだから。

 隣でほお、と田中さんがため息をつく。

「梅沢さんの彼氏さんですか~?素敵な人でしたねえ!」

「え?ああ、うん。そうね。付き合ってるの」

 さあ行きましょうと号令をかけて歩き出す。小走りでついてくる彼女の興奮して甲高い声が耳に届いた。

「そっかあ~!いいですね~!あ、彼氏は彼氏でももしかして、婚約者だったりします?そろそろ結婚する予定とか?」

「え?」

 私は面食らって一瞬足をとめてしまった。

「・・・いえ、違うわよ。彼氏だけど、まだ結婚の話までは」

 って何プライベートなことを話しているのだ私は!心の中で自分に突っ込んだ。

「あ、そうなんですかあ~!梅沢さんみたいに素敵な人がまだ独身って信じられなかったんで、つい聞いちゃいました~!でもいいですね、大人の関係ってやつですね。私は今フリーなんで、羨ましいです~!」

 ペラペラと彼女は私の隣で喋る。コンクリートに響くヒール音にイライラし、少しばかりの不快感が頭の中をしめ、私はついちょっとした嫌味を返してしまった。

「あら田中さん彼氏なし?たくさんいそうなのに」

 だけど彼女は何も感じなかったように、隣でうふふと笑う。その小首をかしげる角度まで完璧に計算されている感じがして、更に不快になる。

「だって男の人って何だか子供っぽかったり偉そうだったりするんですもん!でもあんな素敵な男性だったら欲しいなあ~。本当、梅沢さんには憧れます~」


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