run and hide2~春の嵐~
一応(といったら叱られるけれど)外資系の企画会社の我が社は、社風も何もほとんどないと言える。私は業種柄スーツ姿だけれど、これも自分が好きで着ているだけだし、システムの男共にいたってはジーンズに足元はスリッポンなのだ。私と同期入社の亀山なんて耳にでっかいヘッドフォンまで装着している。だから彼女のリクルートスーツ姿は大変浮いて見えたのだ。
だって黒髪にリクルートスーツだよ?新卒の日本企業へ入社した子みたいでしょ。
「宜しくね。私は梅沢翔子です。慣れるまで大変だと思うけど、焦らなくていいからね」
「はい」
大きな瞳をじっと私にあてて、彼女は頷く。
とにかく、パチパチと拍手を皆でおくって、その新人さんは世話係に任命されたグループで最年少の田島君(つっても28歳)に託される。そしてまたバタバタと忙しい日常業務へ戻ったのであるが―――――――
・・・視線が気になって。
私がくるりと振り返ると、いつでもその新人さんと目があうのだ。
最初はニコっと微笑んだりしてみた。あっちも勿論にこにこと微笑む。それだけで済んだので、ランチに行く頃には頭から新人さんの存在を消せていたのだけれど。
「梅沢さん、ここ一緒してもいいですかあ?」
トレーをもって、田中さんが満面の笑みで立っていた。
私と亀山は一瞬ポカンとした顔をして(多分、ほら、だって正直だから)、彼女を見上げる。
「ええと・・・あ、どうぞ。勿論よ」