run and hide2~春の嵐~


 どうしてそれに気がつかなかったんだろう!そうだそうだ、そうよー!私が変わればいいんじゃない?もっと素敵になって、田中さんが追いつけないようにしてみればいいんじゃない?そうだわ、とりあえずそうしてみて、それでも真似されたら流石に周りも首を捻るだろうし―――――――――――

「おおおーっ!!」

 自分の考えに興奮してつい拍手をする。パチパチパチと盛大に!

 よっし、そうしよう!私が私をもっと素敵にすればいいのよ!なあんだそうか、追いかけられたって大丈夫よ、色んな手がまだあるんだわ。

 とりあえず、髪型や色はすぐにでも変えることが出来るのだ。正輝の好みで全身を固めていたころのアクセサリーなんかはまだあるんだし。明日にでも路線を変更しよう。

 本日最後のお日様の光も消えるころ、私はまだ屋上にいて、入ってきた時とは全然違ったスッキリした気持ちで立っていた。ついでにうーんとのびもする。


 やはり煮詰まった時には自然の風を感じるのがいいんだろう。企画書類と格闘している時もよく屋上には逃げてきたし、正輝のことで悩んでいる時だってそうだった。そういえば、この屋上で正輝に告白の電話をかけたのだった。あれはその後、激しく落ち込む原因ともなったのだけれど。でもでも。

 屋上、偉大だわ!!

 にっこりと微笑んでみると、お腹がぐーと鳴った。きゅるるるる~って無視できない大きさで。

「あははは」

 つい声に出して笑ってしまった。正直だわ、体って。



< 20 / 79 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop