run and hide2~春の嵐~
3、正輝と「あの女」
平たく言うと上司の裏切りにあって、ほとんど最後まで進めていた企画がおじゃんになりかけていたのだった。
それを私と亀山と田島君はそれぞれが心の中で悪態を付きながら、表面上も鬼のような顔でバンバン片付けにかかる。折角ここまで進めてたのに、何しやがるんだあのバカマネージャー!!次にあったら廊下で衆人環視の中無様に滑るようにバナナの皮を放り投げてやる!いや、そ~んなことでは手ぬるいか!コーヒーには唐辛子を注入し、デスクには油をひっかけて、呪いの札でも貼り付けてやるんだ!絶対やってやる~!!なんて、私はそんなことを企みながら方々へ電話をかけまくる。
絶望的状況が危機的状況にまで緩和され、何とか「複雑に絡み合った面倒臭い案件」にまでレベルが下がり、ようやく目処がついたのは夜も10時になっていたころだった。
「・・・・・ああ、やれやれ」
ぐったりと椅子に座り込む。
バカな上司がクライアントの了解を得ずにしゃしゃり出たせいで泡と消える寸前だった企画は何とか姿を保てるように復元された。素晴らしい!私達は間違いなくプロだ!と胸を張りたいばかりの、だけど果てしなく無駄な時間を使って必要な成果をあげ、チームの内3人はぐったりして抜け殻状態になっていた。
ほとんどボロ雑巾。スーツは皺くちゃで、髪の毛は何度も手をつっこんでかき回したせいでボサボサになっていた。
今晩はもう何も出来ることはなく、これで解散しようと言うことになる。