run and hide2~春の嵐~
でも、その一瞬で十分だった。
がっつり目に入ってしまったのだ。
夜の中、まだまだ元気な繁華街で一緒に歩く二人の姿。
うちの新人と―――――――――あれは、正輝。
「―――――――」
・・・は?
私は目を見開いて、そちらを凝視した。
結構な距離に人波まであったけれど、一目瞭然だった。すぐに判った愛しい男と悩みの種の新人。彼らの丁度横には最近進出してきた居酒屋があって、そのギラギラした入口の照明で、二人の表情までがハッキリと判ってしまったのだった。
田中さんは手に小さなバックを持ち、正輝を見上げてにこやかに笑っている。正輝も話をしながら微笑んでいる。私に見せる、あの笑顔で。
どちらも仕事帰りの姿のようだった。正輝の濃紺のスーツ。そして、私に似た格好をした、田中さんのピンストライプのスカートスーツ。
私の頭の中で文字がぐるぐると回りだす。
・・・・え?どうして二人が一緒にいるの?田中さんが帰宅したのは6時の話。今は10時半で――――――――もしかして、今日は二人は一緒にいたの?正輝は今晩の予定は何て言ってたっけ?いやいや、そんな話はしてない。私、今晩の予定は聞いてない―――――――――・・・・・
ぼーっとしてしまった私の肩を亀山が指先で叩いた。
「梅沢」
「え?」
ハッとして、私は亀山を見上げる。