run and hide2~春の嵐~
ネオンをバックに背負って、いつものだるそうな表情を消した亀山が私を見下ろしていた。
「・・・どうする?」
亀山の低い声。もう見てしまったものを否定する気はないらしい。最初は私に隠そうとしたけれど、もう見てしまったから――――――――
・・・どうする?
どうする、私?
ダッシュで二人のもとへ走って行って、問い詰めることも出来る。ちょっと何してるの?二人でいるってどういうこと?って。
または、余裕綽綽でヒールを鳴らしてキャットウォークをし、笑顔で挨拶することも出来る。あ~ら、正輝じゃない!こんなところで奇遇ねえ~・・・。
無視してこの場を立ち去ることも出来る。見なかったことにして、ただの風景の一部として。
もしくは、今は二人に「見たぞ」と告げて、色んな言い訳を自分で考えて、あとで正輝と話すことだって出来る。彼の言い分をまず聞いてからってこと。
でも。
だけど。
私・・・・私、は―――――――――
亀山を見上げて、笑ってみせた。
「行こう、本当にお腹すいたわ」
亀山がじっと私を見た。それから視線を外し、少しの間考えるように首を回す。
だけどやがて頷いて、先に立って歩き出した。