run and hide2~春の嵐~


 なんてたって同じチームに入った子なのだ。中途採用の同期で同じグループだから、社内でランチを取る日はなんとなく一緒に食べている亀山と、バレないように目をあわせる。

 ―――――――お前、喋れよ。

 ―――――――あんたが話しかけなさいよ。

 そんな短い会話を含んだアイコンタクトを亀山と交わしている間に、新人の田中さんはストンと亀山の隣に座ってしまった。瞬間、亀山が体を横にずらしたのに気がついた。

 ・・・やだ、亀山ったら、マジで女の子が苦手なんだわ。

 私の隣も空いていたのに、どうして亀山の隣に、などとは思わなかった。その時は。

 実際はこう考えていた。

 教育係の田島~!!どこ行ったあああああ~!?って。

 腐れ縁と言えるかもしれない勢いで惰性で一緒にランチをとる私達のところに、こーんなフレッシュな新人さんを一人で置いておくなんて!これではいつものように亀山と今進行中の企画の苦情や応酬も出来ないし、下品な話しも出来ないではないの!・・・ヤツ、あとで締めねばならない。私はそう心の中で決心して、仕方なく余所行きの顔で御飯を口へと運んだ。

 亀山はCランチで私はAランチ。それは主に、揚げ物があまり好きでないない亀山がよく選ぶ魚系と、とにかくガソリンを突っ込んでおきたい揚げ物大好きな私のよくあるチョイスだった。そして、新人の田中さんのチョイスは――――――――定食ではなく、オムライスだった。

 ・・・なんか、可愛い。このキャンティーンの出す御飯が可愛らしく思えたことなんて初めてだ。きっと食べる人によって食べ物の印象も変わってしまうのだろう。


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