run and hide2~春の嵐~
さんきゅ、と言って亀山がコーヒーをすする。静かな会議室にはさっきまでのバカ上司への対応会議の残像が残り、シーンとしているのに何やら騒がしい空気が漂っている。
「・・・やれやれ、だな」
「ほんとそれよ。あーあ、疲れた・・・」
同時に深いため息をはいた。
何とか企画は復活したのだ。問題の上司が相手先にお詫びにいって、昨日亀山と田島君と私とで頑張った成果を誠意という形でみせることで、仲直りが出来たのだった。
ぐったりと倒れ伏す私と亀山に、バカ上司はお疲れさんとひょうきんな声だけをかけて逃走したところ。きっとこれ以上残っていると疲れきった部下二人の言葉のつるし上げにあうと思ったのだろう。やるつもりだったぜ、ほんと。
窓から入り込む温かい春の日差しの中、呆けた男女が座っている。
どちらも言葉もなく、ただ戦争のようだった昨日から今日にかけてのことを思い出しているようだった。
その時、亀山が口を開いた。
「・・・梅沢」
「うん?」
「・・・昨日のこと、彼氏に聞いたのか、ちゃんと?」
私はコーヒーをごくりと飲んで、カップのふちから亀山を見た。ヤツは目を閉じたままで椅子に深深ともたれかかっている。
そりゃこいつでも気になるわよねえ~・・・。そうダラダラ考えた。目の前で修羅場が起きるところだったわけだし。