run and hide2~春の嵐~


「自棄酒にももう付き合わない。オッケー?」

「・・・へーい」

 まだしばらく亀山は私を見ていたようだけど、その内音をたてて椅子から立ち上がった。

「じゃ、お疲れ。俺はさっきの内容まとめて本社に送ったら帰る」

「うん」

 足音。それからドアの閉まる音。

 ・・・・あああ~・・・・・。私は更に強く額をテーブルへ押し当てた。

 そうだよね。さっさと話をつけたほうがいい。だって気になって仕方ないじゃない?忘れるなんて無理に決まってる。昨日はアルコールがブラボーな効果を発揮したってだけなんだから(いやそうとも言えないか)。

 うだうだと時間を潰したあと、これ以上は凹むだけだと思った私は、とりあえず先に新人さんと話すことにしたのだ。

 まだ正輝を相手にするには体力も気力も足りないわ、って。だけど、問題の相手の一人はすぐ近くにいる。

 自分のブースに戻るとそこは普段のとおり、牛田辺さんと田中さんが二人並んで事務仕事をやっていた。

「あ、梅沢さん、お疲れ様です」

 牛田辺さんが気がついてそう声をかけてくる。多分に同情のこもった声だった。チームメンバーは皆等しく上司に怒りを抱いているはずだ。

 私は何とか微笑みを浮かべて、頷いた。

「お疲れ様。何とか戻れてよかったわ。――――――ねえ、田中さん、手が離せるならちょっと付き合ってくれない?」

「あたしですか?はあい!」


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