run and hide2~春の嵐~


 私は目が点になる勢いだったけれど、とりあえずイメージ上での心臓の傷が、半分くらい塞がった。そお~んな単純なこと?本気?だって時間や場所が――――――――・・・

 コホン、と空咳をして、私はまた口を開く。

「・・・ええと。そう、偶然会っただけってことなのね?」

「はい!あたしは友達と飲んでいて~それで店を出てバイバイしたところで見かけたんです~。彼氏さんも覚えてて下さって!だから追いかけていって、ちょっとお話ししました。梅沢さん、見てたなら声かけてくれればよかったのに」

 ニコニコニコ~。彼女のバックにはピンク色の花びらがまかれているようだった。

 人畜無害です~って看板が掲げてあるかのように。

 私はもう少し傷が塞がったのを感じる。そうなんだ、正輝も偶然会っただけで、自分も忙しくてコンタクトを取れなかっただけなのかも。私がイライラしまくって勝手に妄想してただけなのかも。

 ホッと息をはく。

「ええと・・・私はまだ仕事中だったの。亀山と一緒だったし、ちらっと見ただけで。・・・でも判ったわ、気になっていたから聞いたんだけど、仕事中にごめんね」

 これでもう後は正輝に確かめるだけ、そう思って、私はやっと田中さんに笑顔をみせる。

 真似されたり行動を同じにされたりでストレスがたまっていたから、変に敵対心をもってしまったんだわ。私ったら、バカなんだから――――――――――

 だけど彼女は席を立たず、更に身を乗り出して言った。


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