run and hide2~春の嵐~


 食事中、梅沢さんの髪型って、素敵です~!それは何色なんですか?から始まって、田中さんはよく喋った。

 新人さんとしての緊張はないのね、それって大物よね、そんな風に考えてニコニコと応えたのは私。亀山は手持ち無沙汰そうに食べ終わったCランチの皿を凝視していた。きっとヤツは早く大好きなスウェーデンのコンピレーションアルバムの世界へ戻りたいに違いない。だけど、窓側に亀山が座っていて通路側に田中さんが座っている。前後も一杯まで人が座っていて、亀山は身動きが取れないのだ。

 それが判っていたから、私はサクッと無視した。

 なんせこの子の相手が、私もちょっと辛かったのだ。同期たるもの苦楽はともにすべきであると考えている。だからここは亀山と二人で乗り切ろうって。ベタベタの甘ったるい女の子の相手なんて――――――私だってごめんだ。

「・・・ええと、じゃあ俺はコーヒー飲むんで、これで」

 会話が途切れて一瞬の間があった時、普段は見せない鋭さを発揮して、亀山がぼそっと言った。私はハッと顔を上げる。ちょっと待て~!!亀山、自分だけ逃げようったってそうは――――――――

 その時、甘ったるいと形容してバッチリな声が侵入してきた。目をあわせていた(正しくは睨みあっていた)私と亀山の間に。

「あ、亀山先輩、あたしが運びますう~」

 首がなりそうな勢いで振り返って、目の前の女の子を、ついガン見した。

 ・・・亀山、先輩・・・?

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