run and hide2~春の嵐~
4、逃げ隠れ再び
思えばほんの1年やそこら前のこと。
長年の片思いがこじれすぎて不毛の極地にいたり、私はようやく正輝を諦める決心をして、彼に「幸せになってね」と言い(実際はちょっと違ったかもだけど)、身を引いたのだ。
・・・いや、公平にしなければ。身を引いた~なんてもんじゃなく、あの手この手を使って逃げまくったわけなのだった。
個人的には彼の姿をみずにいれば、それで心の平安が訪れて、いつの日にが笑い話になり、次に正輝と会うときには普通の友達になっている、はずで。だけどその作戦はうまくいかなかった。まさかの追撃が始まったからだった。
私が逃げれば彼が追ってくる、それは理不尽で大変体力も気力も消耗する日々だった。
だけどあれがあったからこそ、私はついに正輝と恋人同士になれたはず―――――――――・・・なんだけど。
また逃げる日々が始まっていた。
つまり、正輝を素敵なイタ飯屋に置き去りにしたあの夜以来、私は正輝とそもそもの原因を作った新人の田中さんの二人から、逃げまくっている。
田中さんから逃げるのは、心と体の安定の為。
彼女がいくら私の真似をしたところで私がそれを目撃しなければ、恐怖も苛立ちも感じないと気がついた。
正輝から逃げるのは、憎しみと苛立ちを忘れる為。
あっさりと他の女からの接触を受け入れようとした彼氏をそれでも好きだから、可愛さ余って憎さ100倍を地でいく羽目になったのだった。だから、彼のことは目にいれない、心にも入れない、それには姿を見ないのが一番である。