run and hide2~春の嵐~
正直に言えば、辛くて、そっちはめげそうになった。
あうあう、と泣きくれてクッションに顔を突っ込んでいた夜だって何度かある。
つい電話に手を伸ばしそうになって、その右手で左手で叩いたりとか。のおおおおおおおおお~うう!!って絶叫してみたりとか。もう何でもいいから会いたいって。でもやっぱりムカつくし、冷却期間が必要なのよ!って。
怒っているのに彼の胸に飛び込みたい。そんなジレンマを抱えたまま、悲劇のヒロインを演じるには現実的過ぎる頭を抱えて、私は一人で唸っているのだ。
くっそう神よ、ほんと降りてこい!てめえ何してくれてるんだよ、全く私が何をしたっていうのよ~!!と天に向かって暴言も吐きまくった。身を粉にして働いている真面目な女を苛めないでよ!ちょっとドランカーでスモーカーだけど、それでアンタに迷惑はかけてないでしょうがよ!
泣き過ぎてマスカラも取れ、疲れきってヨロヨロになった鏡の中の私はヒドイ顔だったのだ。げーろげろ。何このお化けと言って大正解の顔。
鏡にはタバコの煙を吹きかけてやったけど。だって見たくなくて。
とにかくとにかくとにかく、来週の、6月中旬にあるイベントがちゃんと終わるまでは!そう思って、私は逃げまくった。
メールも電話も無愛想。これではいくら鈍い正輝だって、これはおかしいってそりゃ思ってる。だから「どうした?」という問いかけも多かったし、「話をしよう」って電話がかかってきたのも何回かある(全部電波障害を装った)。
でもまだ。まだだ。
まだ会えない。まだ話せない。