run and hide2~春の嵐~
ちゃんと話をするには私は気持ちの全部をさらけ出さなきゃならない。それには自分では見たくもない醜い感情が山ほど入っていて、嫉妬も僻みも焦りもイライラも悲しみも、全部ぜーんぶをさらけ出すことになってしまう。だから、一大イベントを完了させるまでは自己崩壊は避けなきゃならない私には出来そうもない。
正輝は、ただ、鈍くて、ただ、いい人すぎた。それだけのこと。
だから、彼には多少申し訳ない気持ちもある。
いきなり無愛想になって会えなくなった恋人を彼が心配しているのも、そして傷付いているのも判っている。
だけど今はまだ!会えないし話せない。あの時判ってくれたなら・・・ちょっとは違ったかもしれないけれど。
私が嫌がる気持ちを。それは口に出して説明もしたはずだった。だけど伝わらなかった。私がただ田中さんの若さや可愛さに嫉妬しているだけって感じに思われたこと、あれが本当にショックだったのだ。
畜生・・・。
だから今日も、正輝のメールにはこう答えた。
「地獄みたいに忙しくて、まだ時間はとれそうにないの」って。
あの問題の夜から13日目。
あれから正輝と田中さんが近づいたのかは知らない。私を追いかけるあの情熱をもってすれば、彼女なら正輝を追いかけることだって可能であるとは思いながら、私はひたすら目を塞いで仕事に没頭する。
あと二日。
あと二日なのよ神様!
あさってのイベントがつつがなく終了すれば、そうすれば―――――――――・・・
正輝に、会いにいくから。