run and hide2~春の嵐~


 ・・・ただし、必死でそう思っていたのは私だけ。

 まあそりゃそうよね。だって無視も逃走も、私が一人で考えてやっていたことなんだもの。それに私も若干の疲れが出ていたのだと認めよう。

 会社の中では田中さんから逃げて、会社の外では正輝から隠れる。それはストレスフルな生活に違いなかったのだから。

 だからこんなことになったのだ。

 ああ、神様。恨みます。あの日、正輝を私にむかわせてくれて確かに感謝したのに!なのにあなたは、同じ声で命じるのですね。

 『三者面談をしろ』って。



「梅沢さーん、いたいた!来客なの。ブースに案内してる」

 そう声がかかったのは、田中さんと話をしないためにチーム会議を6分で強制終了させて会議室から出てきたときだった。

「はい、判りました」

 すぐにそう返事をしたのは、田中さんが私を追って会議室からすぐに飛んで出てくるって判っていたから。

 来客、ナイス!ありがとう~!!ってな気持ちで、私は人事のユリコから名刺を笑顔で受け取る。ええと、誰誰?丁度よく来てくれたお客さんは―――――――――

 そして、フリーズした。

『営業主任 井谷正輝』

 の文字が、目に飛び込んできたからだった。

 ――――――――マイ・ガッ!!


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