run and hide2~春の嵐~
クラクラと眩暈に襲われながら、私は一度廊下の壁にもたれかかる。・・・・正輝。正輝じゃないの!何度見直してもどこからどう見ても正輝の名刺だ!ってか何だってここに来てるのよ!?あんたの会社とウチは取引なんてない―――――――――
「梅沢さ~ん!いたいた~!もう待ってくださいよう!今日こそはあたしお聞きしたいことが―――――――」
バタバタと足音を立てて、田中さんまで登場した。
クラクラクラ~・・・。
アウチ。もう・・・本当・・・勘弁して。
涙目だったかもしれない。このアクセサリー素敵です~とまとわりつく田中さんから目を離して、私は一度盛大なため息を吐いた。
・・・畜生、全くなんだってこんなことに・・・。今ここに正輝が来ていることがバレたら、絶対この子はひっついてくるはず。そうしたら強制的に三者面談になってしまう!オーノー。ちょっと待ってよ、まだそんな覚悟も余裕もないのよ私!!
その時、額を押さえる私と引っ付いてくる田中さんにむかって、横から声が飛んできた。
「おーい、田中。戻るぞ、話がある」
二人で同時に振り返った。
廊下に立つのは我がチームメンバー。亀山、田島君、それから牛田辺さん。亀山はいつものように愛読している雑誌を丸めて肩にのせてこっちを見ていて、田島君は心なしか厳しい顔つきだった。牛田辺さんがにっこりと私に微笑んでから、田中さんに向かって手でおいでおいでをした。
「ほら田中さん、いらっしゃい。梅沢さんは来客のようだし、邪魔はダメよ」
田島君も言う。
「行こう。まだ仕事中だ」