run and hide2~春の嵐~


 区切って言った。それで理解してくれると有難いと思いながら。

 だってチーフやマスター、部長クラスの接待ではないのだ。同僚だよ!同じチームの!!もし気を遣っているつもりならば大変な勘違いだし、それはすぐに直してもらう必要がある。

 自分もコーヒー飲むから一緒に淹れましょうか、ではないのだ。どうして野郎の食べ終わった食器を片付ける必要があるのよ!?

 若干顔を赤くしながら言った私をまたじい~っと見て、彼女はにっこりと笑う。それから頷いた。はあい、判りました~って。

 本当のところ理解したのかは謎だったけれど、私はこれで良しとした。

 その時はまだ判ってなかったから。

 彼女の恐ろしさを。

 恋人に昇格していた井谷正輝にだって、新人の転職者がチームに入ったの、と言っただけだった。だって本当にそれだけの人扱いだったのだから。

 まさか。

 まさか。

 彼女にロックオンされたとは、その時の私は気がつきもしなかったのだ。





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