run and hide2~春の嵐~
2、真似っ子ヒナちゃん
最初の変化は外見だった。
田中さんが入社してうちのチームに配属になり、6日ほど経ったある日のことだ。彼女、颯爽とオフィスに入ってきたと思ったら、チームのメンバーが集まる机の前でくるりと一回転をして笑顔で言ったのだ。
「どうですか?イメチェンです!」
皆が同時に顔を上げた。
そこには確かに田中さん。だけど、すっかり外見の変わった彼女が立っていたのだ。
会社が入るビルの大きなピクチャーウィンドウから入ってくる太陽の光で、ふんわりと微笑む彼女はキラキラと輝いている。髪は肩すれすれの長さで緩くパーマがかかっていて、真っ黒だった髪色がハニーベージュに変わっていたのだった。同じなのは、相変わらずツヤツヤってことだけ。
「・・・おおー!」
チーム全員ではもってしまった。
昨日までの「新人研修にいらっしゃったのかしら?」なお嬢さんはどこへ消えた~!?って感じだ。
いきなりドカンと垢抜けた。それに・・・多少、化粧も変えてるのかも。昨日より頬紅がハッキリしている。それに、唇の色も。もうちょっとピンクよりだったと記憶している。今朝の彼女は私が好む、赤いグロスを重ね塗りしているようだった。
あらあら、ラブリー!
私はにっこりと微笑んで、さっきまで攻撃の対象だった亀山の頭から書類を挟んだバインダーを下ろして言った。
「素敵じゃない、田中さん!明るくなって、とてもいい感じよ~!」