オトナの恋を教えてください
スタート!
「どうか、よろしくお願いします!」
大声で言って頭を下げる私を、その人はしばし無言で見つめていた。
定時後の自動販売機前にいるのは、まだ制服姿の私とその人だけ。
「えーと、新入社員のコだよね。確か……」
その人・柏木一(かしわぎはじめ)さんは頭をかきながら言う。
ワックスで流れをつけたスモーキーブラウンの髪が揺れる。
イケメンと評判なお顔が私の30センチくらい上にある。
「データ管理部新人の三条(さんじょう)です。三条いろはです」
「あー、そうだ、そうだ。先週、デー管にお邪魔した時、挨拶したね」
「覚えていただけ嬉しいです」
私が鼻息荒く応対すればするほど、柏木さんの表情は曇る。
……というか、あからさまに引いている。
そのくらいはわかる。
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