オトナの恋を教えてください
「そんなにちっちゃくないですよ!脚立で背伸びすれば一番上だって届くんです!」


「脚立に背伸び。危ないなぁ」


志辺さんが笑う。
白髪交じりの髪と年の割には皺のくっきりした顔が、志辺さんの柔らかい雰囲気をアップさせている。

志辺さんといると、父親のいない私は父娘の疑似体験をしている気分になる。
勝手に思ってるだけだけど。


「ところで三条さん、ちょっと相談があるんだけどいい?」


「はい、いいですよ」


私はバインダーを受け取り、志辺さんの後にくっつきデスクブースに戻る。
山梨部長は会議、宇都宮さんは社内研修、吉永さんは本日お休みという空のフロア。

私は志辺さんの横のオフィスチェアに座る。


「これわかるよね」


志辺さんがパソコンのディスプレイを指す。
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