オトナの恋を教えてください
「ま、だからこうして休めるときに休んでるんだけどな」


「貴重なお休みを私のために、ありがとうございます」


いろはが丁寧に頭を下げる。

少し考えるように視線をめぐらせてから、いろはが言った。


「私ももしかすると、何日か出勤するかもしれません。柏木さんがいらっしゃる日に合わせたら、ご一緒に帰れますかね」


思わぬことに俺は首を傾げる。


「いろはが?俺に合わせて出ることないよ、せっかくの休みに」


「違うんです。……私、ひとつ大きなお仕事を引き継いだんです。それをものにするのに、平日だけじゃ足りないかなってところで」


「大きな仕事?」


「志辺さんが、早期退職のご予定で。営業資料データベースの管理を任されました」


俺は驚いた。いろはの言う仕事は、データ管理部では一番重要な仕事と言っていい。
多くの社員が志辺さんの構築したデータベースに頼っている。
< 161 / 317 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop