オトナの恋を教えてください
いろはは活き活きと語る。彼女の語る近い将来に俺はいない。その一点のみ、虚しさはある。

だけど、圧倒的に嬉しかった。
いろはが『辞める』前提ではない道を選択したのだから。
自分でやりたいことを選び取れたのだから。


「やる気あるじゃん。自信もあるんだ」


「ハイ、伊達にイイ大学出てませんので」


いろはが珍しく、狙ってボケる。


「じゃー、お手並拝見だな。近いうちに、いろはを頼りに行こうっと」


「えーと、夏が終わるまでに、少しは……。いえ!大丈夫です!いつでもいらしてください」


請け負っちゃってるけど、おおいに心配ですよ、お兄さんは。


「いろは、今すごくイイ表情してるよ」


俺は腕を伸ばして、いろはの頬をぶにゅっとつまむ。
いろはが表情を困り顔に変える。


「そうれすか?ほお、いたいれすけど」


「悪い、悪い」


頬から手を離し、いろはの頭を撫でた。
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