オトナの恋を教えてください
「親のために人生を選択するなんてありふれたことだよ。俺だって、両親に介護が必要になったり、近くに住んでくれなんて言われたら、どうなるかわからない。姉は嫁に行っちゃってるしさ。俺が会社辞めるのか、両親をこっちに呼ぶのか。
な、これだって家族のために人生を決めなきゃいけないってことだろ?」


「確かにそうですね」


柏木さんはあっけらかんと言う。


「多かれ少なかなれ、みんなそんなもん抱えてる。だって家族だもんな。家族が喜ぶことしてやりたいってのはフツーの気持ち。
だけど、大事なことがある。それは、自分の中で納得がいっているか」


『納得』という言葉に私の胸が跳ねた。
顔を上げ、柏木さんの顔を見つめる。
柏木さんは続けた。


「覚悟って言ってもいいかも。いつか、家族のためにした選択で後悔したとする。その時、家族を恨んだら大バカのクソヤローだ。そうならないために、自分で人生を選び取るんだ。俺は自分で決めて、今を生きている。そう胸を張って言える選択を、納得してすべきだと思う」


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