オトナの恋を教えてください
柏木さんの言葉を聞くうち、私は目も鼻もツンと痛くなってきた。
『納得』
ああ、私、全然『納得』できていないんだ。
だから、こんなに苦しいんだ。


「柏木さん、私、母が大事なんです。大好きなんです」


「うん」


「でも仕事も職場も大事なんです。社会人になって、初めて自分の責任について考えています。会社の一員になった意味や、私が頑張ることで、助かる人がいるんだなって実感して。先輩たちの優しさも感じて……」


「うん、わかるよ」


柏木さんの優しい相槌に我慢した涙が溢れそうになる。
私は泣くまいと、深く呼吸を吸い込んだ。


「でも、母は私が結婚し家庭に入ることを望むでしょう。今の手がけている仕事も、母に知られたらいい顔されないのもわかっています。だけど……!」


柏木さんが私の頬を両手で包んだ。
滲んだ涙を拭われ、そのまま柔らかく引き寄せられる。
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