オトナの恋を教えてください
「聞き間違い……って取っていい?」


私はぶんぶんとかぶりを振った。

そんなことを言われて簡単に引き下がれない。
こっちは結構な覚悟で、この相談を持ちかけたんだから。

15階フロア南側の自販機に、柏木さんが好きなコーヒーがあるって事前に調べはついている。

そこに張り込むこと30分。
ひとりで現れた柏木さんをようやく捕まえることができたんだもん。


「柏木一さん、お願いします」


ひとつ深呼吸をして、私はあらためて言い放つ。



「抱いてください」



「イヤイヤイヤイヤイヤイヤ……」


なんだか、「イヤ」をいっぱい言われたケド……。

傷つく間もなく柏木さんが私に近付いてくる。

自分で何の臆面もない要請をしておいて、彼から近付かれると心臓が跳ね出した。

しかし、
私の期待する類のことは起こらなかった。
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