オトナの恋を教えてください
「柏木さん、ありがとうございます。柏木さんが彼氏でよかったです」


私が言うと、柏木さんはまったくふざけた様子で返す。


「俺もいろはが彼女でシアワセ~。ほら、パスタくるぞ。食べよう、食べよう」


これが彼の一線の引き方だとわかるので、私は敢えて微笑み返した。

わかってます、本気になんかなってません。
そう、見えるように。


今の告白で私は大事な部分を言わなかった。

仕事だけじゃない。
柏木さんとも離れたくない。

お見合いも結婚も、今となっては嫌。
だって、私には好きな人ができてしまったから。

私はその一部分の本音を言わなかった。

こればかりは、私にはどうにもできないことだから。
この気持ちだけは、私がひとりで処理すべきものだから。
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