オトナの恋を教えてください
「当時は大学から付き合ってる彼女がいたし、Ａ子は研修が同じ班で仲間だったからさ。『友達でいよう』って断り方をしたんだ。
Ａ子はわかったーって納得してくれたみたいだった。だから、その後も仲間内の飲み会では今までどおり接し続けた。Ａ子はサバサバした気持ちのいい性格の女だったし、まさか引き摺ってるとは思わなかったんだよな」


いろはは俺に顔を向けながら、真剣に聞いてくれている。

あまり言いたい話じゃないし、この話を知っているのは本当にごく一部だ。
俺と寝てきた女の子たちは誰一人として知らない。


「Ａ子からは頻繁にメールや電話がきてたけど、友達だし普通に全部返した。
2ヶ月くらい経った頃、また告白されて、それも断った。仲間内でモメたくなかったから、極力穏便にさ。『彼女がいるし、Ａ子のことは同期として大事だからそういう風に見られない』って。
Ａ子には『諦められない。浮気でもいいから相手して』って言われてさ、正直俺にはどうしてそこまで執着してくるのかわからなかった。ただ面倒で、ごめんなーなんて言いながら断るしかできなかった」


考えてみれば、このタイミングでＡ子を突き放していれば、大事には至らなかったのだ。

彼女の精神構造を悪化させたのは、俺の受身で曖昧な態度だろう。
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