オトナの恋を教えてください
俺は自重気味に笑う。


「あとはもうヤケだよな。それなら、そういうふうに振舞ってやろうってさ。実際、もう女はコリゴリだと思ってたし、俺に寄ってくるのが身体目当てのコだけなら、こっちもラク。誰かと心を通わすなんて、もううんざりだった。テキトーに楽しくできればいいやって思ってた。周りの評価も仕事さえ見てくれれば、人間性なんてなんでもいいやって」


そう、ついこの間まで、そう思ってきた。
誰とでも寝て、タラシの評価に乗っかって平気な顔で笑っていた。

いろはに会うまで。


いろはがいきなり俺に抱きついてきた。
頭をかき抱くように、ぎゅうっと。


「ものすごく……大変だったんじゃないですか。柏木さんのタラシ生活は、そのまま人間不信生活です」


「どん引いた?」


「引いてません。でも、ストーカー被害も、その後の蔑視にも、ひとり耐えてきた柏木さんがかわいそうです」


いろはの匂いとぬくもりを感じると、ほっと安心できた。
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