オトナの恋を教えてください
逆らえなかった。

永らく母に追従してきた精神は、簡単に反旗を翻せなくなっていた。
こと憎しみの視線を向けられては、余計に。

スマホもPCも取り上げられ、連絡手段はない。

せめて心配しているだろう柏木さんに連絡をしたい。
だけど、それも叶わないでいる。




その水曜の夜のことだ。
仕事帰りの美野里が私を訪ねてきたのだ。

玄関での話し合う声に私が自室を出てみると、ちょうど帰宅した母が美野里を玄関先で追い帰すところだった。

美野里は私に会いたいという主旨を懸命に話している。
母は応じない。


今にも乱入しようかとする私の腕を、臨時できている例の年配家政婦さんがつかむ。
すごい力で自室に押し込まれかける。


「離してください!」


家政婦さんは無言だ。腕に食い込む骨ばった指は緩まない。
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