オトナの恋を教えてください

非力ながらもどうにか家政婦さんの腕を振り払い、玄関に向かったけれど、そこにはすでに母の姿しかなかった。


「お母さん！今、美野里が……」


「今は美野里さんとも話す必要はないわよ。あなたの仕事は何？」


母の怜悧な声音に一転身が竦む。
答えられないでいると、母が代わりに答えた。


「いろはの仕事は、お見合いをして結婚をすることでしょう？良き妻となり、良き母となる。それがあなたの一生の仕事よ」


「お母さん、私……」


言わなきゃ、柏木さんのこと。仕事のこと。
お母さんに理解してもらえるよう、説明しなきゃ。
今しかない！


「がっかりしてるのよ、私は」


母が私の言葉には一切反応せず、言葉を紡ぐ。


「私に隠れて男性と交際していたこと。いろはには失望したわ。私が用意した幸福な道を土足で踏みにじろうとしていたのね」