オトナの恋を教えてください







玄関のチャイムを押した。

家政婦さんがインターホンに出る。


「いろはです、開けてください」


おそらく母は昼頃の出社のため、ちょうど仕度している時刻。
リビングにいるだろう。

しばらく間があり、私が自室にいないことは確認されたようだ。
ドアが開く。

そこには家政婦さんではなく、母が立っていた。


「状況がわからないわね」


汚れた素足は玄関マットで拭いただけ。母について、リビングに入る。
家政婦さんは気を利かせたのか、部屋から出て行った。
ようやく母と対峙する。


「これはどういうこと?」


母が剣呑に問うてくる。
すっかり仕度を終え、コーヒーでも飲んでいたらしい。

リビングには環境音楽とコーヒーの香りが満ちている。
私たちの持つ喧々としたムードは、場違いな感じがした。

< 262 / 317 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop