オトナの恋を教えてください
隣を歩き出したいろはが曖昧に頷いた。
寂しい微笑みを浮かべて言う。


「当分は、仕事を頑張ります」



俺たちは最後の晩餐にステーキというムードのないメニューを選び、今までどおり笑い合いながら食事をした。
少しだけ酒を飲んで、でかいステーキに二人とも困って、腹いっぱいになるまで食べた。

やけに明るくて、やけに楽しくて、圧倒的に悲しい晩餐だった。


新宿駅西口で別れる時、いろはは笑って言った。


「福岡でも頑張ってください。柏木さんなら、きっとどんなお仕事も大丈夫です」


「ありがとう、いろは。いろはも、デー管で仕事をモノにしろよ。俺、すっげえ頼るからな」


「はい。柏木さんに恥ずかしくない仕事をしますので乞うご期待です」


俺たちは笑い合って、握手をして別れた。
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