オトナの恋を教えてください
そこには三条いろはが立っていた。


「いろは……」


会社帰りだろう。大きな花柄のフレアスカートにインしたトップス。
ふわふわの髪は結っていない。

そのあまりにいつもの姿を間近に見て、俺は喜びとも困惑ともつかない気持ちが湧いてきた。


「何か用事?」


俺の問いには答えず、いろはは俺を押し込むように玄関に入った。
よもぎが足元に来ていたので、逃げないように気を利かせたのだろう。


「お邪魔します」


違う。
いろはは靴を脱ぎ、俺を押しのけるように部屋に入った。
勝手知ったるというように、ずかずかとリビングに入ると、呆気にとられて追う俺へ振り向いた。


「いろは、ホントどうした?」


「柏木さん、失礼します」


言うなり、いろはが俺にぶつかるように抱きついてきた。

いろはの髪から懐かしい香りがして、その細い身体の感触が愛しく胸を締め付ける。
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