オトナの恋を教えてください
いろはは俺の狼狽に気付いているのか。
間近く俺を見上げ、言い切った。


「夜這いにきました。私に襲われてください」


「はぁ!?」


驚く俺の首に精一杯背伸びしたいろはが腕を回す。
力が無い分、体重をかけて俺の顔を引き寄せると、強引にキスをしてきた。

経験値不足のいろはのキスはぶつかり稽古みたいに乱暴で、無我夢中で。
気持ちいいとか、そんなレベルの話ではない。


やっと唇を離した時に、はあはあと肩で息をしているのはいろはの方だった。


「おい、いろは。大丈夫か?」


「ずるいですよ、柏木さん」


腕をほどき、うつむいたいろはが唸る。
それから耐え切れないように叫んだ。


「こんなに好きになっちゃったのに、元になんか戻れるわけないじゃないですか!!」
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